心理療法とは何か(二) | 目白駅から徒歩1分 精神科・心療内科・カウンセリング・精神療法専門  堀田クリニック

堀田クリニック

完全予約制(自費診療)
03-3565-7500

当クリニックの特徴

心理療法とは何か(二)

心理療法とは何か(一)で、治療について「精神分析の視点を用いて、クライエントの自然な所と不自然な所をそのままに見分けていく共同作業」と書きました。
また、身体の感覚によって導かれる所がある、とも書きました。

そこからの連想で、
「…実験でちゃんとほんとうの考えと、うその考えとを分けてしまえば、その実験の方法さえきまれば、もう信仰も化学と同じようになる」
という宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」の一節が思い浮かびます。
この一節は、「今日から始めます」という記事に書いた同作中の「ほんとうのさいわいはいったいなんだろう」という言葉のすぐ後に出てくる部分です。

こころの中の本当と嘘とを「そのままに」見分けていくことは、簡単なことではないとも思います。なぜなら、こころの奥深い所や細やかな所は、未だに科学的な手法で直接観察できるわけではないからです。
「そのままに自分を見る」という事の本意は、客観的な観察や実験結果をベースにする科学的な態度とは対照的な、むしろ主観的なものを大事にしていくことではないかと考えています。
そういうセラピストの態度と、クライエント自身が同じく主観を大事にしていくこと、その両方が、こころという形のないものの真実、本当のものが明らかになっていくために必要不可欠ではないかと思っています。

あるクライエントの不自然な部分を指摘するやり取りになった時に、
「それが私のだめな所だ、と言われたように感じてしまう」
というレスポンスがありました。
僕の方では、少なくとも意識的にはそのつもりはなく、「それは意外だった」と伝え、それと同時に、僕自身も教育分析で問題点を指摘され、同じように感じた事が何度かあったことを思い出しました。
改めて、そういう風に感じるんだな、とこのクライエントのあり方への理解が深まったと感じた場面でした。クライエント自身もまた、だめな所だと感じてしまう自分のあり方を自覚する機会でもあったと思います。
さらに回を重ねたのちに、このクライエントが思いがけない涙を流し、「だめな所だと言われたように感じる」という罪責感こそが感じることへの抵抗であり、無意識になっていた自分自身への許せなさを自覚した出来事がありました。
そして、この体験と時を同じくして、日常生活の中で、例えば職場の上司や同僚に対して無意識に本心を抑えて相手に合わせていたという気付きが増え、結果としてそれが緩むという事が起きていました。

また、セラピストである僕自身の方も、主観で感じ取ったものが僕の不自然な所によって歪められている部分も当然あるはずです。
「あなたたちは、セッションで日々参禅しているようなものだ」
これは、僕が教育分析を受けている津川先生の師匠である近藤章久先生が、セラピストたちに向けて言った言葉です。
毎日クライエントと会う時に、相手の立場に身を置いてその言葉を聴き、その奥にあるものを身体的に感じ取ろう、と心がけてセッションに臨んでいますが、時間が終わって振り返ってみると、なかなかそうはなっていなかった――知的に理解していた部分があったのではないか、先回りの悪癖が出てしまっていたのではないか等――と感じることもたびたびあります。
あるいは、やり取りの最中にクライエントのある表現に対して、僕が応答した時にクライエントの雰囲気が変わり、僕のお腹からもやもやしたものが上がってくる感覚が生じて、自分の応答のずれに気づかされることもあります。

結局、そのままに見る、というのは、その時その時の主観そのものを徹底していく――身体内部の感覚で直接的に受け取ることだと思います。こころでこころを分かろうとする治療とは、クライエントの中にそういう感覚が育つことをサポートすることだと、僕は考えています。
例えば、これを書いている今も感じているこのお腹の張りの感覚は、僕自身の体験として唯一無二であり、だからこそ誰とも共有できないものです。クライエントの内面に生じる気持ちの奥にあるものも同じく、誰とも共有できない深さを持つものです。
内面に生じた気持ちを湧くままに言葉にして、そこにくっついている自責や自己嫌悪、恐怖などの感情をセラピストと一緒に見ていくことを重ねていきます。すると、次第にそれらに呑まれることが減り、そのものを見る態度が増えていきます。その時の身体内部の感覚をつかみ、そこに馴染んでいく――それが治療の中で起きていく変化だと感じています。

誰とも共有できないものを抱えた人間同士が、場をともにして、より主観を主観として感じていくやり取りをしていく。その営みが、こころの深い所へと導いてくれるのではないかと思います。

2026年6月5日 記

お問い合わせはこちら
03-3565-7500
初回 受診相談フォーム
診療時間・曜日

月・火・金・土・日(休診日 水・木・祝祭日)

受付時間
午前:10:30〜13:15 午後:14:15〜19:00
(13:15〜14:15は昼休となります)

Page Top